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長野式研究会






時々日記
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85cmの魂

●時々日記
vol.2 時々日記 … (2)


ペットロス症候群

この文は、半年以上も前に書き始め、色々な仕事の合間に少しずつ書き加えたものです。
たった、一匹の犬ですが、居なくなると寂しいものです。
ふと思っては書きました。
少々、長い文となりましたが、犬好きの方でも、時間のある時にお読み下されば感謝です。
ちょうど、一周忌になりました。
この文がほぼ出来上がっていましたが、松本岐子先生のセミナーを控え、仕事が非常に忙しかったので、きちんとまとめてアップしようと、延ばし延ばししているときに、新しいパートナーが来てしまいました。
その記事は、後ほど、アップします。

尚古堂のアイドル犬‘ヘイ太’が、2007年5月12日、犬には珍しい直腸癌のために亡くなりました。11歳でした。
一昨年の5〜6月頃より、便に血が混じり始めたので、かかりつけの獣医さんの所に連れて行くと、肛門から指入れて調べて「特に何ともないから、便が硬くならないような食事をさせなさい」とのことでした。
相変わらず、便に血が混じり、度々、排便時に痛みで悲鳴をあげるようになったので、再度、獣医さんに連れて行き調べてもらいました。
簡単に、「腫瘍ができています」と言って、すぐに組織検査をし、陽性とのことで、即、手術!
一昨年の10月14日に手術をし、切除した組織の精検を行ったところ、リンパにも転移していて、早くて3ヶ月、長くても半年の命でしょうとの宣告でした。
何ヶ月も前から連れて行ったのに、見逃して…、と、恨みたい気持ちでした。

抗ガン剤や消炎剤などの副作用で、口内炎がひどく、水さえも染みるので、水はスポイトで、お粥は箸で喉の奥の方に無理矢理押し込みました。
手術後は、肛門周囲が気持ち悪いのでしょう、自分で舐めて治そうという本能なのでしょうか、一日中、肛門を舐めるためにクルクル回りっぱなし。
便は、固まると傷口を刺激するので、下剤を飲んでいるために、度重なる排泄物の処理で、夜中は家内と交替でシーツの取り替え。
鳥のササミが便を軟らかくするというので、毎日、家内は新鮮なササミを買い求めては茹でてお粥に混ぜました。
寝ていても、突然、違和感が感じられてくるのでしょうか、ガバッと起き上がってはクルクル回り、しばらくして横になると、また、違和感を感じて…、の繰り返しです。
時には、寝る姿勢も辛いのか、立ちっぱなしで寝ていて、カクッと足を折って目を覚ますことも。
鍼灸治療を試してみようと思いましたが、急に飛び起きるので危険であり、出来ませんでした。安心するのでしょうか、ただ、身体に手を触れているだけでもリラックスして、横になっていました。
ガンで手術を受けたということは、犬にとっては理解できないことでしょう。
昨日まで何ともなかった肛門が、突然、痛みや違和感が一日中感じられるようになり、口の中も、今まで食べたり飲んだりしていたものが、非常な刺激物になってしまったのです。
動物に気功を行う有名な獣医師のところにも行きました。
1回目は、帰ってから1〜2日程ゆっくり眠れた感じがしましたが、2回目の時には、もう駄目と思われたのか、初回とは異なり、サッサと終わってしまいました。
(このような様子も、患者さんの気持ちを考えなければ…という反面教師になりました)

手術後3ヶ月程経った頃から、少しずつ散歩を始めました。
曲がり角付近に来ると踏ん張るので、今までのように、自分の行きたい方を主張しているのかと思い、無理矢理引っ張りました。
弱って、歩みが非常に遅くなってきてから思うと、散歩が辛くて、休みたいと訴えていたようです。良かれ…、と思って行ったことですが、却って苦しみを与えていたのかと思うと、申し訳ない気持ちで一杯です。

亡くなってからも、どこかにいるような感じがして、‘ヘイ太…’と呼びたくなるようなときがありました。
死んでからも、近くに霊はさまよっていて、別れをしている…と聞いたことがありますが、そのような気配なのかも知れません。
毎日の生活の中に組み込まれていた‘ヘイ太’との営みが、一つずつ現実として失われていくのを実感していくのは、大変寂しいことです。
悲しみは、少しずつジワリと深くなっていきます。
私の患者さんに、子供が幼くして無くなった方が何人かおられ、治療中の会話の中に、ふと、漏らすことがあります。
犬でさえ悲しいのに、我が子を亡くした悲しみはいかばかりか…と思います。
その方の症状の深いところに、そのストレスが横たわっているように感じます。

 子供の患者さんには、良き相手(食べ物に釣られてですが…)をしてくれ、まさに、看板犬の役目を果たしてくれました。
癒し犬でもありましたが、食べ物には、‘卑しい犬’でした。
雑種は、健康で長生きということで飼ったのですが、更に、健康で長生きして欲しいとのことで、なるべく自然食に近いドッグフードを与え、腹八分を心がけました(飼い主は駄目でしたが…)。
このように早く亡くなるのだったら、もっと色々なものを好きなだけ食べさせてあげればと悔やまれます。
夜9時頃になると、そろりそろりと階段を上り、途中の踊り場で、(私たち二人が何も食べていないナ…というのを確認するように)「お先に失礼します」という顔をして、先に2階の引き戸を開け、寝床に行きます。(その後、私たちが、2階の引き戸を閉めに上っていきます。閉めるまでやってくれると、「ポチタマ」に出られたのですが…)
ビールが好きで、私たちがヘイ太の寝る頃を見計らって、缶ビールのフタをあけると同時に、2階で、ガサッという音がしたと思うと、引き戸をカリカリ掻く音が聞こえ、「美味しそうな音が聞こえましたネー」という顔で、踊り場に姿を現しました。
(大さじ1杯ほどのビールでしたが)
戌年の年賀状を、その勇姿で飾りました。
翌年は、‘ヘイ太’にイノシシの恰好をさせて、亥年の年賀状をと思っていましたが、叶わぬ夢となりました。
 思い出は尽きません。

亡くなる1週間程前から、ほとんど動けなくなり、家内が、「辛かったら頑張らなくてもいいよ。でも、死ぬときは、お父さん(私)がいるときにしてね」と話しかけていました。
「ヘイ太は、良い子だね…」と褒めると、動けない身体でも、目を向けて、尻尾を僅かに振りました。
最期の数日は、ほとんど寝たきりで動けない状態だったのに、朝起きてみると、排泄用のトレイにきちんと排便してありました。
昨年の5月12日(土)の治療が始まるちょうど9時に、私の腕の中で息を引き取りました。
その日は夕方から、私一人で京都に行く日でした。

当院の患者さんは、犬好き・猫好きの方が非常に多いので、待合室に各自ご自慢の犬・猫の写真が飾ってあります。また、待合室には、犬・猫の本が置いてあります。
患者さんは、ご自身の症状を言われる前に「ヘイちゃん如何?」と聞かれることがしばしばあり、私たちの返答に、一緒に一喜一憂してくれました。
‘ヘイ太’が亡くなったことを知ると、涙ぐむ患者さんもおられ、また、亡くなってしばらくたってから、恐る恐る‘ヘイ太’の様子を尋ねる方もおられました。
どうなったか心配で、聞けなかったというのです。
共に、心から悲しんでくれる人が傍らに居て下さるのに、大変癒やされました。
 多くの患者さんや知人に、お花や供物をいただきました。
 少し早すぎる天国行きですが、皆に惜しまれて、幸せだったのではと、考えることにしています。

最初は外犬でしたが、大雪の後に屋根から落ちる雪に驚き、震えて何も食べなくなってしまったので、家に入れてあげたことがきっかけで、ズルズルと家の中で飼うようになりました。
健康なときには、ヘイ太も室内では、決して排泄しなかったので、大雪だろうが、台風だろうが、毎日の散歩は欠かせませんでした。
‘ヘイ太’が病気で動けなくなり、また、亡くなって散歩をしなくなって、体力の衰えを実感しました。
毎年、非常勤の講師として、鍼灸学校に教えに行きます。
2階に講師控え室があり、5階が教室ですが、前回までは何も考えずに教室に入っていきましたが、ヘイ太の手術後、散歩をしなくなってから鍼灸学校に行き、学校の階段を上ってみると、教室に着いたときには、息が上がっていました。
1日中ベッドの周囲を歩くだけで、1日に2回、郵便物と新聞をとりに出る以外は、外に出ない生活では良くないと、散歩犬として‘ヘイ太’を飼いました。
始めは、自分の散歩だけでなく、‘ヘイ太’にも散歩をしてあげていたと思っていましたが、亡くなってみると、こちらが‘ヘイ太’によって、散歩をして頂き、健康で生かされていたことを痛感します。

犬とは、何と忠実な動物でしょう。
少々ぶたれても、尻尾を振って寄ってきます。
帰ってくると、玄関まで走ってきて、喜びのあまり勢い余って止まれず、漫画のように、ツーゥと滑って止まったり、無心の寝顔を見るのも、楽しい思い出です。
いつも、飼い主の方を見つめています。
今回、ペットロスとは、如何に悲しく寂しいかを実感しました。
流石の岐子先生も、秋田犬の愛犬‘ガビ’が亡くなったときには、悲しがっていました。
以前、ペットロスの患者さんが来院されましたが、やはり、自らが実体験すると、その気持ちがよく分かります。
治療家も、元気な人より、身体の弱い人の方が、あるいは、悲しい経験のある人の方が思いやりがあるのかも知れません。
また、今回、獣医師の態度により、医師の選択、医師の心などが、非常に大切ということも学びました。

後で、患者さんから、隣の町に有名な獣医師がいるのを知りました。
動物を第一に考えて治療を行っているそうです。
 その獣医さんのところでは、積極的に捨て犬を保護し、里親を探しているそうです。
 まだ、骨と写真が居間にあります。
一周忌が過ぎ、心が落ち着いてきたら、骨をおさめて、‘ヘイ太’に似たような犬をその獣医さんから貰ってこようと思っています。


ヘイ太の名前の由来


※人生ならぬ‘犬生’を謳歌していた頃
以前、朝日新聞の連載漫画「ガタピシ」を愛読していました。
その主人公の息子の名前が‘ヘイ太’です。
もうお亡くなりになりましたが、私は、作者の園山俊二さんのファンです。
待合室には園山俊治さんの描かれた「国境の二人」という漫画が置いてあります。
とても平和を願っていた方で、国境を隔てた二人の敵同士の兵士の、ほのぼのとした交流が描かれています。
犬を飼おうと思ったときに、オスならば‘ヘイ太’、メスならば「ガタピシ」の中の2文字の「ガタピシ」を取って、‘タピィ’とするつもりでした。

※亡くなる前日の写真




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