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長野式研究会



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症例報告

●症例報告 Vol.1


「RAの症状が、血圧調整処置によって飛躍的に改善した」と考察される症例報告

ホームページの最初の症例報告をどれにしようか、ズーッと迷っていたところ、以下の原稿が、送られてきました。今まで、私の講座の多くに参加され、現在も熱心に参加下さっている《千葉県:谷香織さん》からの報告です。
数年前に鍼灸学校を卒業されていますので、まだ、フレッシュな感覚で、学校で学んだ様式できちんとまとめてあり、長野式治療法を学ばれた方でしたら読んで分かり易いばかりでなく、臨床も積まれてきて、治療に悩みながらも鍼灸の面白さがわかり、効果を挙げられている様子がよく分かります。
分かり易いように多少の手直しをしましたが、そのまま掲載しました。谷さんの症例報告を、どうぞお楽しみ下さい。


この患者さんは、以前、先生にファックスで質問をし、ご指導いただいた患者さんです。
その後、週一回のペースで当治療院に来院されています。
初診から9ヶ月ほどの期間があり、全部をお伝えするのは難しいので、以下ポイントを絞って、ご報告いたします。52歳、女性、会社員(事務職)、独身。
2005年2月6日初診。(鍼灸治療は10年前に受けて以来久しぶり。)

初診からの治療の流れ
■ 初 診
【主訴】

腰痛、肩こり。1ヶ月程前からの全身の関節の痛み。
本人の父親がRAと糖尿病、母親が膠原病を持っているため、本人は関節の痛みを心配していた。同時期に病院で検査し、RA因子は陰性。ただし、抗原抗体反応の値が高く、膠原病になりやすい体質と診断される。この段階で医師は経過観察のみと診断する。
関節の痛みは特に起床時にあり、膝と腰が痛む。
初診の3ヶ月前に原因不明の高熱が1週間続いた。2004年6月に閉経。

【所見】

脉状…「細・遅」、「胃の気」なし。腹診…「右天枢」(圧痛++)、_血反応あり、右季肋部(+)、鼠径部(+)、ネーブル(+)特に右。「火穴」反応…肝・腎・肺共に(+)。「天_」「翳明」共に(+)。背候診…「膏肓」に激しい圧痛、「大腸兪」「志室」〜「京門」に圧痛、T11に圧痛。
皮膚は鮫肌。鼻が詰まり易い(鼻筋がやや曲がっている)。
症状は右に出易いと自覚している。主訴の腰痛は、「大腸兪」付近で特に右。肩凝りは「膏肓」に最も感じる。関節の痛みは骨というよりスジが痛いと自覚あり。特に膝関節のスジ。
血圧104/79、脈拍65(座位)、足のムクミを日によって感じる。たまにメマイがある。

【治療】

初診からの治療(特に治療効果のあったものに網掛けをする)(基本処置として、「胃の気」(もしくは「三カン治療」)、_血・扁桃処置は必ず行う)原因不明の熱やスジなど、扁桃の反応が色々出ていることから扁桃処置。(手三里や大腸兪など)
閉経後であり、脉状が遅、「京門」に圧痛がある、ことなどから、補腎(下垂の意味も込めて。手の開閉が楽になる「京門」を探して刺鍼など)ネーブルに圧痛があることから、副腎処置(「復溜」・「兪府」・「尺沢」、または「復溜」に代えて「照海」や「築賓」)。
遺伝の要素が高いことから「膏肓」。RAの処置としてのSU尺・「小腸兪」・「次_」。
皮膚・肝の反応が出ていることから、「肩グウ」・「築賓」。
父親が糖尿病、甘い物好き、T11の圧痛があるので、シュガーポイントに「横V字型椎間刺鍼」。(これで「膏肓」の圧痛がよく取れました)毎回、経穴を取り、自宅で毎日‘せんねん灸’をしてもらう。経穴は、上記の中から適宜選択。

以上の処置を、その時の所見や症状によって、適宜組み合わせて治療をしていきました。
いずれの処置も、その経穴を押圧して、ターゲット点、もしくは関節の動かしづらさや痛み、スジや骨の痛みが緩むかをチェックして行いました。
血圧に関しては、初診時に測っただけで問題意識はなく、血圧調整処置は長い間行いませんでした。

【経過】

〔4回目〕膝と腰のスジの痛みが楽になり、起床時も痛みを感じない。最近イライラしなくなった。

〔6回目〕全身のスジは痛くなくなってきたが、手指が左右とも痛むようになってくる(骨の痛みと自覚。手の開閉がし難い)。
※以後、スジより、骨が痛いと自覚するようになったので、治療は腎(「復溜」・「兪府」・「尺沢」や「京門」)を中心に、「大杼」や「絶骨」、頭皮鍼、「膏肓」などを治療する。〔〜18回目まで〕日によって、スジと骨の痛みは比率を変えて自覚。
※本人は、RAの進行(この時点では、RA因子は陰性)が鍼によって食い止めれらているように感じているとの事。父親が、一気にRAの症状が進んだので、少しでも遅らせたいと言う。手の開閉がし難いことが一番の主訴。その他、足底や足首、肘に体重がかかったり、ぶつけるととても痛む。

〔18回目〕肩凝りはほとんど感じない。この前後から脉状が「遅」ではなくなってくる。
※ここで1ヶ月来院なし。(家庭の事情で時間が作れなかったため)

〔19回目〕(2005年7月23日)再検査で、RA因子が陽性となる。薬はアザルフィジンとNSAIDを処方され、現在まで服用している。「右京門」に塊を認める。
※以後 RAの処置としてのSU尺・「小腸兪」、補腎(手の開閉が楽になる「京門」(特に右)を探して刺鍼など)、「膏肓」(「京門」や「志室」の圧痛、手の開閉が楽になる処)、頭皮鍼(手の開閉が楽になる処)を中心に治療していく。症状は、急激に悪くなることはなかったが、手の開閉がし難いのは不変。足底、足指に体重がかかると痛む。毎回、「京門」を念入りに治療したためか、21回目には、腰痛は全くなくなり、肩凝りもほとんど感じない。鼻の通りが、このところ良くなっていることに気づいたとのこと。足のムクミは日によってあり(血圧調整処置をしていないため、と後に考察される)

〔27回目〕(2005年9月24日)村上先生に血圧調整処置のことを習ったので、初診以来、初めて血圧を測る。横臥位で、治療前82/57脈拍60。血圧が大変低いので、血圧調整処置として、「百会」、「三陰交」・「陰陵泉」を行う。また、「膏肓」を押しながら、階段の昇降をしてもらい、足底や膝の痛みが減弱する「膏肓に」刺鍼、21壮施灸、セイリンjrを保定した。「膏肓」は以前から使用していたが、階段の昇降で試したのと、セイリンjrの固定はこの時が初めてである。その他は、前述の通り、RAの処置、補腎、扁桃処置を行う。治療後、横臥位で、血圧93/68、脈拍51、体が温かく、足底や膝の痛みが大変楽と言って帰っていった。

〔28回目〕(一週間後)前回治療後、関節の痛みは大変良く、その楽さはずっと続いている。先日の血液検査の結果、RA因子は陰性とのこと。本人は鍼灸が効いた、早めに治療をしていたので良かったと言っている。足のムクミは、前回治療後から全く感じなくなり、メマイは、そういえば最近感じないと言う。薬を服用していることや、_血の反応があることから、 ‘芋がら’を食べるように伝える。

※以後、27回目の治療が大変効果があったので、これを基本として治療を継続している。現在30回目の治療が終わり、引き続き経過は良好である。

【まとめ】

血圧が低い患者に対し、血圧調整処置を加えたことにより、他の全ての処置が効果的に働き、治療効果が飛躍的に高まったと考察する。薬の効果も血圧調整処置により高まったのではないかと考える。
今後の臨床では常に血圧を意識して臨もうと考えている。

以上、長文お許しください。伝えたりない所、抜けている所が多々あるかと思います。
不備な点をご指摘くだされば、追ってご報告させていただきます。


【補足:村上】
長野潔先生は、血流が悪いと治りが悪いと言われました。ですから、低血圧、貧血、「細脉」、「血虚」などは最初に処置をされることが多かったです。
特に低血圧は、「労宮」や「百会」を最初に処置し、ここで10位血圧を上げてから次の治療を始めなさいと言われました。

治りがもう一つという時には、低血圧の時には、血圧調整処置を加えてみては如何でしょう。
私に、血圧調整処置を習ったので…とありますが、ちょうど、‘松本先生の著書を共に学ぶ講座’で「Blood Pressure and Cardiac problems」(血圧および心臓疾患)を学んでいたところであり、血圧調整処置を加えたら愁訴が消失する症例も掲載されていました。それが、ヒントになったのでしょう。
この様に、ちょうど学んだことがヒントになることが非常に多くあります。不思議なものです。

膠原病やリウマチなどは、長野式治療法の定石として、副腎処置、「数脉」には「関元」・「遅脉」には「小腸兪」です。それに、膠原病やリウマチなどのバックグラウンドには、扁桃がありますので、扁桃処置もよく行いました。
長野潔先生は、「照海」「兪府」「尺沢」を置鍼した後、リウマチの脉状である「洪脉」が改善するまで、「関元」に丁寧に雀啄しました。時には、まず最初に「関元」の雀啄からということも少なからずありました。松本先生は、長野式治療法を拡大解釈して、リウマチなどの自己免疫疾患に効果があるのなら、他の自己免疫疾患にも使えないかしら…と使ってみたら、何と効果抜群!松本先生のセミナーでも、よく使用されています。
この方の場合、遺伝的要素が強いので、「キー子スタイル」から「膏肓」が功を奏します。自己免疫疾患には、遺伝的要素が関係していることが多いので、私は、「関元」(または「小腸兪」)と「膏肓」はセットで使用することが多いです(もちろん遺伝的要素がない時には使用しませんが)。
長野先生は、「京門」はグリグリした硬結を探して、それを鍼でほぐすように何度か刺鍼し、雀啄されました。「京門」は、その人の過去の病歴を表していると言われ、大きい硬結ほど、その人の身体に何か負担があったと言われました。

‘芋がら’、赤目の里芋の茎を干したもので、オ血の強い人には、必ず食しなさいと言われました。大分駅近くの「ときはデパート」地下の食品売り場には、大分名物の一村一品運動で作られた様々な食品があり、その中に、‘芋がら’がありました。
長野先生が多くの患者さんに勧めるので、陳列棚の奧にあった‘芋がら’も、入り口付近のワゴンで売られるようになりました。スーパーや自然食食品の売り場では、1袋300〜500円ほどで売られています。丁度、今頃は、農家でも里芋の収穫があり、‘芋がら’を干してあるところがあります。地域によっては‘ずいき’とも呼ばれています。近くに農家のある鍼灸師の方は、お聞きするといいでしょう。
‘芋がら’の料理法は、お年寄りや料理の得意な人に聞けば教えていただけると思います。
家内は、アクを出して水を切った後、5cm位に切って冷凍しておきます。それを毎日数本取り出しては、味噌汁や炒め物に細かく刻んで入れても良し、酢の物や煮物にしても良いです。新潟の親戚では、よく‘芋がら’の甘酢漬を送ってくれます。

長野先生は、自宅施灸をよく勧められていました。長野先生がご存命の時に、治療院では、1箱500円のセンネン灸のモグサと線香のセットが、3ヶ月で100箱売れるとお聞きしました。自宅施灸は、鍼灸の効果を持続させるには非常に有効と言われました。
長野先生の治療が非常に効果があったのは、一つは、この自宅施灸があったのかと思います。また、施灸は地域差が非常に大きいように思われ、大分一帯では、違和感もなく、多くの患者さんが自宅施灸をされていました。私の治療院では、自宅施灸をして下さる方は、本当に少ないです。どうしてもして欲しい方には、センネン灸の一番弱いのをして頂いています。
‘芋がら’にしても、‘自宅施灸’にしても、患者さん自身が積極的に自らの病気に取り組もうとするその態度も重要なのかと思います。「天は、自ら助ける者を助ける」なのでしょう。

山と積まれた症例報告は、少しずつ、ホームページに掲載していこうと思います。是非、楽しみにお待ち下さい。このホームページで何度も繰り返していますように、故長野潔先生は「鍼灸の地位向上は、多くの症例を集めて検討し、より良い治療法を確立すること」と述べられています。皆様も、興味ある症例がありましたら、ご報告下さい。そして、皆さんと共に症例を検討し、より良い治療法を確立していきましょう。
ご意見もお待ちしています。




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